里山ORC研究会

今日は毎月恒例の里山ORC研究会。今回はコモンズ研究会との合同開催。里山ORC研究会では、主に里山ORCの研究スタッフが自分の専門の紹介と里山での取り組みなどについて議論しあう。研究スタッフは、文系理系の多岐にわたるため、ふだん聞けない民俗学や仏教学(里山で修行とか)や法学(農業政策)などの話などが聞けて楽しい。


今回の研究会は、所有論がキーワードの法学系の2題。一つは都市景観訴訟と土地所有権の話。要は、土地所有者は法で決められている基準内(例えば高さが基準以下)であれば、景観にそぐわない建物を建てていいのかという問題。肝は、景観法や景観条例が都市景観にミスマッチなビル建設を止めることが出来るのかという点。実際のところ、景観法にも景観条例にも、景観上よろしくない建築物を差し止める規定がないらしい。近隣住民が民事訴訟で頑張るしかないらしい。何のための景観法なのか。だからビル建設反対!などと書かれた立て看をよく目にするわけだ。


このロジックを里山に当てはめてみる。里山(正確には里地・里山)は水田・ため池・水路・農用林などが織りなすランドスケープつまり景観の一つだと言われる。この景観を無視した開発をするかどうかは、所有者の判断となり、法的には守れないとなる。まあ確かに所有者の立場になれば、景観云々と言うより開発会社に土地を売ったほうが手っ取り早く現金収入が得られるのかもしれない。特に所有者が高齢&担い手不足なら、管理放棄された里地・里山は容易に手放されるかも知れない。


ではきちんと管理された美しい里山の風景とは不可逆的に失われていくノスタルジーでしかないのか。その風景・景観を残すためのよい仕組みはないのだろうか。この解決には、農家が土地を手放さない仕組み、つまり農家の跡を継ぎたくなるほどの安定した高収入が見込める農業の仕組みを作り上げるしかないのだろう。あるいは現金収入という点だけを考えればエコツーリズムとか。しかしこっちは厳しいようだ。このエコツーリズム、前回の研究会の発表テーマだった。成功している部類に入る地域の事例でも、収入的にやっていける個人は限られているようだ。さらにもしそこら中の農家が生き残りの策としてエコツアーをやり出したら、自然志向の都市住民という限られたパイの取り合いとなるかもしれない。やはり高収入農業しかあるまい。これを実現するためにはWTOの問題にもなにか手を打つ必要があるだろう。いくら地産地消が流れになりつつとはいえ、やはり安い農作物が海外から入ってきたらどないもならない。外食産業は基本的により安い農作物を使うからだ。だから消費者の知る権利として、外食産業にも産地表示をしてほしいものだ。というのも、先日「すきや」で豚丼の豚と米の産地を聞いたら店長らしきに人に分からないと言われた。


少し高くても国産しか扱ってませんって店があれば通うのになぁ。


しかし減反を推進しながら里山の景観や生物多様性保全を説くこの国の矛盾はどうかと思う。里山の景観や生物多様性水田稲作をすることで維持されてきたのだ。