夜の森


昨夜、アカネコール*1で捕れた昆虫を回収した。講義を終えてから、暮れ行く森に明かりを持たずに入った。あたりに闇が広がると、別の感覚が研ぎすまされる。


暗くなるにつれて鳥の鳴き声がやむ。闇の奥から枝が折れる音がする。足を止めて耳を澄ます。獣かと思ったが、また静まり返る。再び歩き出すとふと甘い匂いがする。何の花だろうか。しばらく歩くとまた別の匂いがする。目の前を小さな白い影が横切る。こんな闇夜をガの仲間はフェロモンの匂いをたよりに飛び回っているのだろう。IBOYライトトラップ*2の結果では、林冠より林床にガ類が多かった。林床のほうが風が穏やかなのでフェロモンの濃度勾配がはっきりと現れるのかもしれない。だから、フェロモンの発生方向、つまり配偶相手の居場所を特定しやすいのかもしれない。6月も中旬になり、飛び交うガの個体数が一気に増えた気がする。
もしこのフェロモンが目に見えると夜の闇もとても賑やかな場所かもしれない、などと思いながら夜の里道を歩いた。

*1:アカネコールは常時設置し、サンプル回収を2週間に一度おこなっている。前回の回収はこちらhttp://d.hatena.ne.jp/kheperer/20050523

*2:IBOYライトトラップはこちらhttp://d.hatena.ne.jp/kheperer/20050509